ガーナ政府は「ガーナ中期国家開発政策(2018-2021)」において、社会開発(産業化を担う人材育成)を主要政策の一つに位置付けている。2018年に改定された「教育戦略計画」(Education Strategic Plan: ESP 2018-2030)では、政策目標の一つに「教育マネジメントの改善」を掲げ、学校レベルの教育マネジメントの改善にはコミュニティのより生産的な参画が必要としている。同国では教育サービスの実施運営を地方へ移譲していく地方分権化の方向性が2008年の教育法に明記されたことを契機として、地方分権化に即した郡・学校レベルの教育マネジメントの強化が求められている。
我が国は、対ガーナ国別援助方針(2012年4月)において、「保健・理数科教育」を重点分野として掲げており、教育行政の運営改善など、包括的な学習環境の改善に資する支援を行う方針である。2010年から2019年にかけて、個別専門家「教育セクター地方分権化支援アドバイザー」をガーナ教育サービス(以下、GES)に派遣し、地方分権化が進む中央-州-郡-学校レベルの教育マネジメント強化を支援した。特に2015年以降は、仏語圏アフリカで展開しているみんなの学校プロジェクト(以下「みんなの学校」)のアプローチを初めて英語圏のガーナで導入し、コミュニティ・学校・行政の協働と情報共有を通じた、学校運営の改善及び算数ドリルを用いた補習活動に取り組んだ。ボルタ州及びイースタン州のそれぞれ1郡において行われたパイロット活動の評価の結果、学校運営委員会の機能化と子どもの基礎学力の改善が確認され、ガーナ教育省関係者及び世界銀行を中心とする開発協力機関から高い成果が認められた。これを受け、ガーナ政府は我が国に対し、より広域なスケールアップを目的に「みんなの学校:コミュニティ参加型学習改善支援プロジェクト」を要請し、2020年から4年間の予定で業務が開始された。
なお、本プロジェクトは、株式会社国際開発センター及び株式会社パデコとの協力関係の下、コミュニティと学校の協働を通じて初等レベルの子どもの学習成果の改善に資するモデルの普及展開を念頭に、学校から中央レベルまで学校運営に係る能力強化を行い、最終的に学校や子どもの学習環境の改善を目指している。