パキスタンは識字率(15 歳以上)が 58%と低く、学齢期における不就学児の数もは 2,280 万人と世界ワースト 2 位である。その背景には、家庭の貧困、教育に係る価値観、ジェンダー差別、学校までの通学距離、学校教育の内容及び教員の資質等、様々な要因が存在している。特に、就学率・識字率共に男女格差が大きいことが課題となっている(UNESCO Institute of Statistics, 2019)。
学齢期児童の不就学課題を解決する手段の一つとして、ノンフォーマル教育(Non Formal Education、以下「NFE」)の有効性が実証されている。児童が居住するコミュニティ内、または周辺に学習環境が整備されるため、地理的要因に左右されず、かつ必要経費も安価であることから、また家庭内要因や文化的価値観の点からも障害が少なく、有効なアプローチであると認識されている。
パキスタン政府は、 NFE を公教育の機会を享受できない子どもや成人に対するオルタナティブ(代替的)なアプローチと位置づけ、「国家教育政策枠組み 2018」においても優先事項の一つとして NFE の改善・普及計画を採用し、現在はNFEの質改善と普及が重要課題として挙げられている。
JICA は、2004 年よりパンジャブ州で NFE 支援を開始し、2015 年から「オルタナティブ教育推進プロジェクト」を通じてバロチスタン州、シンド州にも対象地域を拡大し、速習型のノンフォーマル初等教育及び成人識字教育のカリキュラム・教科書・教員研修モジュール・アセスメント手法の開発支援を行ってきた。さらに、2021 年に開始された同プロジェクト(フェーズ 2)では、対象をパキスタン全域に拡大し、さらに支援対象を中等教育レベルへも広げることにより、若者・成人に至るまでの学習機会提供の強化にも取り組んだ結果、2021 年末までに両フェーズを併せて13 万人以上(学習者及び教員)に裨益している。
上記取り組みで活用されている速習型学習プログラムに係る教科書は、すでに全国への導入が進んでいるが、今後は国際基準を意識した質の改善を念頭に、特に算数・数学の教科書を改訂・開発する必要が提起されている。
当社は、JICAとの契約に基づきコンサルタントを派遣し、初等教育算数及び前期中等教育数学科の速習型学習の教科書、副教材、教員用指導書(以下教科書等)の改訂・開発を支援する業務に取り組んでいる。