パレスチナ自治区では、今日までに基礎保健指標は大きく改善したものの、疾病構造の変化により、循環器系疾患、癌、脳血管疾患等を合わせた非感染性疾患(NCDs)が死亡原因の7割以上を占め、母子保健関連疾患のそれを大きく上回るようになった。しかしNCDsへの対策が遅れていること、診療環境が未整備であることなどから、NCD患者を自治区外の医療機関へ移送せざるを得ないケースが増加している。また一方で、その診療費は自治政府の保健財源から支出されており、2015年の公的保健支出の3割強を占め、自治政府の財政を圧迫していることが確認された。
こうした状況下、同自治政府は「国家保健戦略(2017-2022)」を策定し、NCDs予防の啓発推進、死亡率低減、重症化防止のための早期発見、医療サービス向上等の実現に加え、二次及び三次病院におけるインフラ整備を掲げている。さらに同地域の拠点病院において、NCDs診療に資する医療機材を整備することで対策の強化に取り組むことを確認している。
本調査は、NCDsに関連した医療環境の変化を背景に、パレスチナ西岸及びガザ地区に位置する4拠点病院(ラフィディア病院、ヨーロッパ病院、ナセル病院及びインドネシア病院)の機材整備に関し、来るプロジェクトの背景、目的、及び内容を把握し、効果、技術的・経済的妥当性を検討した。その上で、協力の成果を得るために必要かつ最適な事業内容・規模に係る概略設計を行い、概略事業費を積算するとともに、プロジェクトの成果・目標を達成するために必要な相手国側分担事業の内容、実施計画、運営・維持管理計画、現状の4拠点病院の技術的・管理的・財政的能力の情報を含めた導入後の運営計画等を提案することを目的に、インテムコンサルティング株式会社とともに実施された。